ブルー・フィールド
 
 脚が上がらないくらいに疲労しながら、帰路につく。

「浅野君。明日の朝、起きれる?」

 いつもの様に電車の中で、俺と寺尾、あーちゃんが4人掛けに座っている。

 北田兄妹と井上先輩と三村先輩はいつも4人一緒。

 瀬戸先輩は当然村山と2人の世界。

 最近はこれが定着している。

 降りる駅が同じ組、に別れてるだけで、深い意味は、多分無い。

「明日は起きれそうにないな、こりゃ」

 実際、今週は毎日遅刻寸前まで寝てたし。

 普段から? 普段は学校来てから寝てるから。

「そっかぁ。あ、じゃあ起こしてあげりゅ……アハッ、噛んじゃった」

 そう言ってペロッと可愛らしい舌を出す寺尾に、あーちゃんが

「由美だめよ、ロリ属性の浅野君にそんな言葉遣いしたら、萌え狂っちゃうから」

と制す……って

「ちょっと待てい! いつから俺はロリ属性になった!」

「いつからって……生まれてすぐからでしょ?」

「え? 浅野君って幼女趣味なの?」

「こらこら! 俺にそんな趣味はない!」

 危ない人に仕立てあげるな!

「へえ、じゃあどんな子がタイプなのかな〜?」

 あーちゃん、分かっていながら聞いてんだろ。

「そりゃあ、あれだ、あのな?」

 そんなの、本人目の前にして言える訳無いって。

 しかも間の悪い、と言うか、他の人達はもはや降りている。

 助け舟がないじゃないか。

 ちらっと寺尾を見ると、さすがに興味が有るのか、俺を吸い込ませるあの澄んだ瞳を向けている。

 そんなに見つめるなよ、照れるじゃないか。

 ではなくて。

「えっとな、ほら、こんな公衆の面前で話をする内容じゃないじゃないか」

と言ってちらっと横目で見渡してみれば……何故か今日に限って他に乗客がいない。困った。
 

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