ブルー・フィールド
 
 陣地を確保し、選手は着替えてから一旦戻ってくる。

 女子はまだ戻らない。水着から制服ならまだしも、水着に着替えるだけなのにやたら時間がかかるのは何でだろ?

 マネージャーの4人は、着替えずに荷物の見張り番をしてくれている。

 最近はiPodやらDSやら持ち込む生徒もいるから、盗難には気をつけないと。

 と、あーちゃん。

「浅野君は精神統一とかで、音楽聞いたりしないの?」

「いや、特には」

 そんなのに頼る必要がないからな。

「あ、そっか! 統一するような精神がないか!」

 それは言い過ぎだとは思いませんか?

「浅野君は緊張するようなタイプじゃないわよね」

 大畠先輩まで……てか、どう見られているんだ?

「神経が太いとかじゃなくて、無いとかかもな」

 兄北田はそう言って笑っている。

 この先輩達は……ぐれてもいいですか?


 そんな話をしていると、開会式が始まった。

 選手宣誓をするのは、男子は市立商業のキャプテン。女子は県立商業のキャプテン。

 女子の他競技は知らないが、水泳に関しては飛び抜けた学校はない。

 とはいえ、5つの有力校がある。

 個人入賞もこの5校からが大半で、その他の学校は、せいぜい5位か6位。

 飛び抜けた学校が市立商業だけ、の男子の方が、入賞しやすいのか。

 プールがフィールドだからか、県規模だからか、俺達他の選手は、スタンドからその模様を眺める。

 市立商業のキャプテンが、野太く存在感のある声で選手宣誓を始めた。

「あの声でカラオケ歌わせるなら演歌だな」

「なんでいきなりそんな話を思い付くの?」

「寺尾はどっちかっていうとポニョとかが似合いそうだよな」

「ひっどーい! これでもあゆとか上手って言われるんだよ」

「ん、あゆよりのぞみちゃんの踊りが似合いそうだが?」

「それは見た目がってことでしょ!」

「早い話がそういう事だな」

「最近の浅野君、意地悪だよ?」

「可愛い子には旅をさせろ、と言うからな」

「ぜんっっぜん意味通じてないですけど」

と結局選手宣誓など全く聞かず、開会式はいつの間にか終わっていた。
 
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