ブルー・フィールド
「たださ、村山君? ってマジ経験者?」
村山の見た目は身長も多分160cm程度に低く、着痩せではなく身体全体の線が細い感じを受けるが。
「なんで名前が疑問形なのか気になるけど……これでも小学校の時からスイミングスクール通ってたんだから」
SS(スイミングスクール)経験者が中学デビューの俺に負けてたってのはどうなんだろうね?
「そうか。じゃあ村山君? も相当速いんだな」
市大会とはいえ、決勝レースで隣にいたのなら、そこそこのタイムを出しているんだろう。
「何で名前が疑問形なのか分からないんだけど。えっと、タイムは……」
そう言って語尾を濁す。
「ん? 決勝までいくんだ。そこそこのタイムは出したんだろ?」
他の選手が全員食中毒にでもなって、繰り上げられた、等というご都合主義でもあるまい。
「あ! あの、隣で泳いだっていうのは、予選の事なんだけど……」
なんだ。どおりで。
「それは失礼した。まあそれはこの際よしとしておこう」
何がよしかは分からない。便利な言葉、といったところだ。
「僕こそ紛らわしくてゴメンね」
確かにそうだ、と言いたいところではあるが、村山の態度を見ていると気の毒に思えて、言葉を飲んだ。
「まあいいさ。なら村山君? も水泳部に入るんだな?」
「なんでいつも名前が疑問形になるのか分かんないけど。水泳部に入るから、見学に誘ったんだよ」
「疑問形なのはこのページまでだ、気にするな。なら放課後一緒に行こうか」
そう約束をし、残りの弁当を平らげると、適当に残りの時間を村山と話しながら過ごした。