ブルー・フィールド
それでもさすが寺尾。ペースは良くないものの、二番手以降には差を付けて第三泳者の飯島先輩へ引き継ぐ。
飯島先輩はさすがに経験豊富なんだろう。引き継ぎもスムーズだ。
って褒めても、どうせ私は年増ですから、って怒るんだろうな。
飯島先輩のタイム自体はまあそれなり、なんだが、さすがは1組目。いい感じでリードを守っている。
この組では敵はいない、感じかな。
「飯島もいい感じやんな」
井上先輩がそう言うと
「だな。今回はみんな調子良いな。」
と兄北田も続ける。
その顔には安堵の色が浮かんでいるように見えるのは、多分気のせいだろう。
飯島先輩はリードを広げないまでも守り抜いた感じで、アンカーの三村先輩へ引き継ぎ。
三村先輩は飯島先輩よりもベストタイムは速いものの、ちょっとムラッ気がある。
調子を落とすと、多分村山よりも遅いだろう。
「悪い例に出さないでよ」
「仕方ないだろ。他に例えになる人がいないからな」
「でも他にも例え方あるよ」
「例えば?」
「……無い、ね」
まあタイムで表現すれば話は早いが、面白くないしな。
「さて。今日の三村はどうだ?」
兄北田が井上先輩に問い掛けている。
「どうやろな。気分はいいみたいやったけど。体調はな」
「そういえば、井上先輩と三村先輩ってやたら仲良いみたいっすけど……」
いつか聞こうと思いながらスルーしていた話なんだが。
「まあ幼なじみやしな。俺が関西行ってた三年間以外はずっと一緒やし」
幼なじみってまた安易な設定だな。萌えでも始まるのか?
「誰に聞いてるの?」
「いや。今のは単なるスランプ作家に対する担当編集者の愚痴みたいなもんだろ」
村山には意味不明だろうがな。俺にもイマイチよく分からない。