ブルー・フィールド
 
「まず、大塚が俺にちょっかい出してくるのは、あいつの勝手な勘違いだから」

「勘違い?」

 寺尾は疑わしげに繰り返す。

「俺と大塚って中三の時に同じクラスだったんだ。で、部活一緒だし、まあ普通より仲良くはしてたんだけどな」

「でもそれだけで裸とか……」

 いや、一気に話をそこへ持っていかれても。

「いやいや、まずはさ、順に……」

「いいですよーだ! 別に私と浅野君は何の関係も無いんだから!」

 ああ? 言うに事欠いてなんだ?

「あーそうですか。それはそれは。俺の勝手な勘違いでしたか。んならもういいよ!」

「いいならもういい!」

 タタタっと走り去っていく寺尾……ヤバイ。一気に逆上したが一気に冷静になった。

 とりあえずリレーがあるから戻らねば。

 しっかし何であんな物言いしちゃったんだろ? ついつい売り言葉に買い言葉なんだが、男らしくないよな。

「どう? 寺尾さんの機嫌治った?」

 小うるさい村山を一発小突いておこうかと思ったが、さすがに八つ当たりするのは可哀想なので、軽く無視するだけにしておいた。

「おいおい。痴話げんかして大丈夫か?」

 兄北田の言葉すらむかつくんですが、さすがに先輩に対してそんな態度は取れないし。

「別に痴話って仲じゃないそうですから」

 ムスッとした俺の言葉に、ディランばりのオーバージェスチャーを見せる先輩達。

 大人な対応をされて、ちょっとムカついたが、ここは俺も大人になるしかない、か。

「まあ終わったらちゃんと話ししますんで」

「そやな。何があったかは知らんけど、ちゃんと話しせんとな」

「とりあえず気分収めて、リレー、頑張ろう、な」

 何となく慰めてくれる先輩の言葉に気分も落ち着いてきたので……。

『ボコッ!』

「痛いよ! なんで?」

「いや、村山を小突くと気分が落ち着くんでな」

 我ながら村山の扱いがひどいとか思うが、まあ気にしない。気にしたら負けだ。

「だから、誰に負けるの? それ」

 そんなの知らん!
 
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