ブルー・フィールド
 
 男子リレー、とりあえずは気持ちを切り換えてリレーに集中……できる訳が無い。

 ねちっこい性格じゃないが、まだ今さっきの事だし。

「そうぶつぶつ言わないで。僕も手伝うからさ」

「現場を知らない村山が何を?」

「え? っと……」

「事件は会議室で……」

「ダメだよ! それ言い切っちゃうと著作権が……」

 ん? いまさらだが、まあ止めておくか。

 実際、俺と寺尾の2人だけなら、今の場面をコピペするだけだし、村山に居てもらった方がまだマシか。

「まあそれは後で、だな。とりあえず今はリレーを頑張るか」

 第一泳者の俺がある程度頑張らないと、次が村山だし。

 本人なりに頑張ってるのは分かるが、それはそれ。タイムはタイム。

 第三泳者の井上先輩だって、元はブレスト選手。員数合わせでフリーリレーに出るだけだから、タイム的にはそこそこ。

 下手すりゃアンカーの兄北田の頃には順位=組最下位が確定しかねない。

 不思議なもので、陸上のリレー何かも似たようなものなのか、引き継いだ時点の順位や前後とのタイム差は、やる気を上下させる。

 最下位だから諦める、とかは無いが、100%のつもりでも実際には90%しか力が出ていなかったり。

 逆に前泳者が頑張っていると、いつもの100%を越えた100%が出てくる。

 詳しくは肉体と精神の関係に詳しいスポーツ心理学博士に……

「そのネタ、ついさっき使ったよ?」

 村山め、黙っていればバレないかもしれないじゃないか。


 コースに着いて、軽い準備運動をしておく。

 リレーは中学時代からさんざっぱら出場しているから、まあ慣れたものだ。

 だからといって、余裕ぶっこいてたら、裏に嵌まるから、その辺りは引き締めて、と。

 選手紹介が順に行われていくが、まだこの組辺りまでは部員数が少ない学校が多いのか、声援もまばら。

「はい。第一泳者、コースに着いて」

 役員に言われ、まずは俺が飛び込み台へと進む。
 
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