ブルー・フィールド
 
 残り5mライン、兄北田はついに2コースと並んだ。この追い上げペースなら、ラスト5mでも十分追い抜けそうだが。

 しかし大概の選手はラスト5mラインが見えると、スパート中のラストスパートをかける。

 ご多分に漏れず、2コースも何となくペースアップしたか?

 隣のコースだけに、2コースの他の選手も水際まで寄って声援をしていて、ちょっと五月蝿い。

 ラスト1m、接戦のまま。

 そのままほぼ同時にゴール。

 電光掲示板に目をやると、4位の所には『2』の数字が。

「あちゃー。ホントタッチの差やな」

 井上先輩はそう言うが、あまり残念そうではない。

「あー、負けたか」

 プールの中からも兄北田の声が聞こえるが、こちらも残念がっている様子は無い。

「先輩達、結構平気なんだね」

「まあな、一旦はほぼ最下位まで落ち込んだんだから、良かった方じゃないのか?」

「……僕のせい?」

 所在無さ気な村山は放っておくとするか。

 結果は5位でも、それぞれが泳いだ結果、というのが必要な事な訳で。

「なら引き上げるか」

 井上先輩の言葉で、プールサイドを後にし、引き上げ始めた。


 陣地に戻ると、リレー選手以外は着替え終わっていて、女子のリレー陣が着替えに行っている所だった。

「はい、ご苦労さん。このチームとしては良く頑張った方だね」

 藤木先生の言葉は誉めているんだろうか?

 いつも口調が厳しいので、こう言われても誉められているのかどうか、良く分からない。

「んじゃあ撤収するから、着替え行って来て」

 伊藤部長の指示で着替えの更衣室へ。

 とりあえずいろいろとあった初日も無事終わり……って無事じゃないんだよな。

 この後、厄介事が待っているのを思い出した。
 
< 92 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop