ブルー・フィールド
残り5mライン、兄北田はついに2コースと並んだ。この追い上げペースなら、ラスト5mでも十分追い抜けそうだが。
しかし大概の選手はラスト5mラインが見えると、スパート中のラストスパートをかける。
ご多分に漏れず、2コースも何となくペースアップしたか?
隣のコースだけに、2コースの他の選手も水際まで寄って声援をしていて、ちょっと五月蝿い。
ラスト1m、接戦のまま。
そのままほぼ同時にゴール。
電光掲示板に目をやると、4位の所には『2』の数字が。
「あちゃー。ホントタッチの差やな」
井上先輩はそう言うが、あまり残念そうではない。
「あー、負けたか」
プールの中からも兄北田の声が聞こえるが、こちらも残念がっている様子は無い。
「先輩達、結構平気なんだね」
「まあな、一旦はほぼ最下位まで落ち込んだんだから、良かった方じゃないのか?」
「……僕のせい?」
所在無さ気な村山は放っておくとするか。
結果は5位でも、それぞれが泳いだ結果、というのが必要な事な訳で。
「なら引き上げるか」
井上先輩の言葉で、プールサイドを後にし、引き上げ始めた。
陣地に戻ると、リレー選手以外は着替え終わっていて、女子のリレー陣が着替えに行っている所だった。
「はい、ご苦労さん。このチームとしては良く頑張った方だね」
藤木先生の言葉は誉めているんだろうか?
いつも口調が厳しいので、こう言われても誉められているのかどうか、良く分からない。
「んじゃあ撤収するから、着替え行って来て」
伊藤部長の指示で着替えの更衣室へ。
とりあえずいろいろとあった初日も無事終わり……って無事じゃないんだよな。
この後、厄介事が待っているのを思い出した。