ブルー・フィールド
 
 仕方ないから、コーヒーを一口飲み、話しを続ける。

「あのですね、修学旅行なんですがね、クラス一緒だから、同じ班で回るわけですよ」

「同じに決まってるでしょ?」

 あーちゃんはポテトを口に挟みながら口を挟む。

 はしたないから止めた方がいいよ。

「あ。中央中はクラス少ないから。うちの学校はクラスが多いから、前半後半に分かれてたんだけどね。それはこの際関係ないんだけど」

「なら言わなくて良いから!」

 何だよ、一生懸命説明してるのに。

「まあいいや。で、あれは2日目だったかな。昼に俺宛に家から電話かかってきたんだよ」

 中学時代は携帯は無かったから、先生に連絡が入ったんだけど。

「兄貴が救急車で運ばれた、ってね」

 一瞬で皆の顔が暗くなる。この手の話での定番だが。

「で、夜ホテルまで戻って、俺は先生の部屋で家族からの電話待ちしてたんだ。そして連絡があったのが8時過ぎだったかな、まだ消灯時間前だった」

 わざとらしく声のトーンを落としてみる。皆もそれに合わせて、しんみりムードをかもし出してくる。

「電話の向こうから聞こえてきたのは……」

『ゴクンッ!』

 あ、あーちゃんが生唾飲み込んだ。

「もしもし、私、メリーさん……」

「きゃーーーーってこらっ!」

『ドンッ!!』

 あーちゃん、テーブル壊れるからそんな力いっぱいに叩かないで。

「ちゃんと話しないなら帰るわよ!」

「すまん。さすがに夏だけに怪談話も良いかなーとかさ。ハハハ」

 笑ってみたが、2人はすごっい勢いで睨みつける。

 怪談よりこっちの方が恐い。

「すまんす。いや、兄貴のあれは普通に盲腸ってだけで、切って縫ってチョン! で終わったよってだけでさ」

 盲腸をこじらせて死ぬ人もいるから、そう簡単なものでも無いんだろうが、幸い兄貴は大事には至らなかった。
 
< 97 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop