ブルー・フィールド
仕方ないから、コーヒーを一口飲み、話しを続ける。
「あのですね、修学旅行なんですがね、クラス一緒だから、同じ班で回るわけですよ」
「同じに決まってるでしょ?」
あーちゃんはポテトを口に挟みながら口を挟む。
はしたないから止めた方がいいよ。
「あ。中央中はクラス少ないから。うちの学校はクラスが多いから、前半後半に分かれてたんだけどね。それはこの際関係ないんだけど」
「なら言わなくて良いから!」
何だよ、一生懸命説明してるのに。
「まあいいや。で、あれは2日目だったかな。昼に俺宛に家から電話かかってきたんだよ」
中学時代は携帯は無かったから、先生に連絡が入ったんだけど。
「兄貴が救急車で運ばれた、ってね」
一瞬で皆の顔が暗くなる。この手の話での定番だが。
「で、夜ホテルまで戻って、俺は先生の部屋で家族からの電話待ちしてたんだ。そして連絡があったのが8時過ぎだったかな、まだ消灯時間前だった」
わざとらしく声のトーンを落としてみる。皆もそれに合わせて、しんみりムードをかもし出してくる。
「電話の向こうから聞こえてきたのは……」
『ゴクンッ!』
あ、あーちゃんが生唾飲み込んだ。
「もしもし、私、メリーさん……」
「きゃーーーーってこらっ!」
『ドンッ!!』
あーちゃん、テーブル壊れるからそんな力いっぱいに叩かないで。
「ちゃんと話しないなら帰るわよ!」
「すまん。さすがに夏だけに怪談話も良いかなーとかさ。ハハハ」
笑ってみたが、2人はすごっい勢いで睨みつける。
怪談よりこっちの方が恐い。
「すまんす。いや、兄貴のあれは普通に盲腸ってだけで、切って縫ってチョン! で終わったよってだけでさ」
盲腸をこじらせて死ぬ人もいるから、そう簡単なものでも無いんだろうが、幸い兄貴は大事には至らなかった。