ブルー・フィールド
 
「で、まだ風呂に入ってなかったから、入ろうかな、となった時に、先生に言われたのが、小浴場に入れって」

「小浴場?」

「ああ、バスの運ちゃん達が入る風呂なんだけど。そのホテルは大浴場は、学生は貸しきり時間以外は入れなくてさ」

 それもこれも、兄貴の代に一般客と一緒にしたら、暴れ過ぎでクレームがきたかららしい。疫病神な兄貴だ。

「で、小浴場っても、何人かは入れるくらいデカイ浴場だから、俺もゆっくりしてたんだ」

 実家の風呂は、それほど大きくないし、やっぱり風呂はのんびり入りたいし。

「そしたら誰かが脱衣所に来たんだけど、バスの運ちゃんかな、とか思って。別にホモの運ちゃんじゃなきゃ何の心配も無いし」

「ギャグはいいから!」

 いちいちあーちゃんに睨まれる……反省しよ。

「そしたら入ってきたのが大塚だったよ、と。そんだけ。裸を見せ合ったって言うよりも自然と視界に入ったって感じだけどな」

 こんな三流ラブコメの王道パターン、話す方がよっぽど恥ずかしいわ。

「でも何で純子ちゃんはそのお風呂に行ったの?」

 お、寺尾さん。なかなか答え難い所の質問をしてきますね。

「んっと、二人は銭湯とか大浴場とか、どんな体調の時でも入れる?」

 できればこの言い方で察して欲しいんですけど。単語を出すのは気が引ける。

「あ! 生理ね!」

 っておい! あーちゃん! はっきりしかもそんな大声で言わない!

「そう……なんだ?」

 寺尾も納得してくれた、かな?

「でもそれって本当なの?」

「んっと、証拠は無いし、証言もしてくれる人は近所にはいない。信じる信じないはお任せ」

「……ん、わかったよ。浅野君の言う事、信じてあげる」

 寺尾の口から出てきた言葉にホッと一息。一応納得してくれたんだな。

「でも、いいの? 純子ちゃんは浅野君の事好きなんでしょ?」

 はい?
 
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