SEASONS
震える手に気づかれないように、あたしはまた手を動かした。


「……ありがとう。助けてくれて」


本当はちゃんと顔を向けて、目を合わせて言わなきゃいけないのに。



今、目を合わせたらあたし──きっと泣く。




「つき合ってると思ってたのはあたしだけだったんだね。あたしのこと、好きって言ってくれたのも、嘘だったんだね。あたし、絶対男にだまされないって思ってたのに。

……バカだなぁ」


砂を拭き取ったあとに、涙のシミが新しく出来た。
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