SEASONS
貸出カードを整えようとしたのに、そのカードで指を切ってしまった。


「どうした?」

あたしの声が聞こえたのか、奥の方からアイツの声がした。


「……」


指先に線を描くように血がにじむ。



「切ったのか?」

カウンターに向かい合うように立ったアイツがあたしの手首を掴んだ。


「……平気」

あたしは無意識にその手を払いのけた。



どうしてそんなことしたのかわからない。



でも、掴まれた手首が熱かった。
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