SEASONS


「……帰りたくない……」



大野くんはあたしを、壊れ物でも扱うかのように優しく抱いてくれた。


まだ抜け出したくないベッドの中で。

あたしは大野くんの胸にすり寄った。


「オレも帰したくないけど、そうもいかないだろ」

頭を撫でてくれる手が気持ちよくて目を閉じた。


トクン、トクンと聞こえる心臓の音に耳をすます。


「彩……」

「ん?」



顔を上げると、大野くんは少し悲しげな表情をしていた。
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