SEASONS
「なぁ。どうしてあいつなの?」

「やめて、どいて……」

「冷たいなぁ。一度はキスした仲なのに」

「……っ」


唇が触れそうな程近い距離でそう言われて、その瞬間、あの時のことを思い出した。


ふわりと微笑んだアイツの指が、あたしのあごを持ち上げた。



「……触らないでっ」

パシン、と乾いた音が静かな図書室に響く。


あたしは弾かれたようにその手を払い退けた。



「好きでもないクセにっ……こんなことしないで」



自分で払い退けたのに。


手よりも胸が痛いのは……どうしてだろう。
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