SEASONS
「……帰る。後よろしく」



払い退けたことで出来た隙間を無理やりこじ開けて、カバンを乱暴に掴んで図書室を出た。


そうでもしないとアイツの前で泣きそうだった。




人がほとんど来ないような階段に着いてから、ようやく息を吐き出した。


「……いたい……」


払い退けたその手で、シャツの胸元を握り締めた。



大野くんを大切にしたい。

好きだって言ってくれた気持ちに応えたい。


それなのに。


こんなちょっとのことで、あたしの心はすぐに乱れる。


胸元を握り締めたままうずくまった。



あたしの気持ち……。


「かき乱さないで……」

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