SEASONS
「……え?」

「俺だったら離さない」



──真っ直ぐ放たれた言葉に、胸がギュッと締めつけられた気がした。





「悩み事なら、話くらい聞くけど?」

「……え?」


「大野と離れなきゃいけない理由でもあるわけ?」

「……気持ち悪いよ。アンタが優しいなんて」



あたしは泣き出しそうだった。


だから立ち上がって、隠れるように書架の間に逃げ込んだ。




「失礼なやつだな」

声が近づいていた。



「お前が考えるよりも、いい答え出してやるぜ?」

「……どっちが失礼よ……」



その声は、すぐ後ろでしていた。
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