いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「ありがとね、久世君」

「は?何が?」

……無意識に言ったのか。


怪訝な顔している久世玲人に、やれやれ、と小さく息を吐いた。

心配してくれてちょっと嬉しかったのに。

……ま、いっか。


「私、小心者だから色々言われても言い返せないけど…。でも、分かってるから。久世君は優しいところもあるって」

「優しくはねえよ」

鼻で笑いながら久世玲人は否定してくる。


「優しいよ。噂のような悪い人なら、こうして心配なんてしてくれないでしょ?こうして送ってくれたりも。ましてや、弟と一緒に遊んでくれたり」

「……」

「ありがとね」

久世玲人を見上げ、微笑みかけながらもう一度お礼を言うと、その顔はジッと私を見つめたまま固まっている。


「……久世君?」

呼びかけた瞬間、バッと視線をそらされた。


…何?何なの?

せっかく素直にお礼を言ったのに、失礼な…。

それとも照れくさかったのだろうか。


あまり突っ込むと怒られそうなので、そっとしておいた。

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