いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
男たちからの拘束がなくなって体は自由になったのに、先ほどの恐怖と、ついでに、久世玲人への恐ろしさで体が動かない…。

本気で怒りを纏う久世玲人を見るのは初めてだからだ。


ふるふると震えながら目を開けてあたりを確認すると、久世玲人は自分のシャツを脱ぎながら私の横に腰を下ろしていた。

Tシャツ姿になり、心配そうな表情で私を抱き起こして、そのシャツをかけてくれる。


きっと、今の私の状態、見れたものじゃないんだろう…。

ありがたく受け取り、胸元を隠すようにシャツを引き寄せた。


さっきの冷ややかな目で見下ろされてたらどうしようかと思ったけど、私に向ける目はいつもの、いや、それ以上に優しい。


「菜都、……大丈夫か?」

「う、…あ、」

うん、ありがとう、って言いたいけど、声がうまく出てこない。

思った以上にショックを受けているみたいだ。


さらに、久世玲人の存在と、腕の中にいるという絶対的な安心感で、気付いたら自然と再び涙が溢れてきていた。


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