いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
動揺を隠しながら、ペタペタと手早く消毒を済ませて慌てて体を起こした。


……妙にドキドキする。

忙しく刻む鼓動を誤魔化すため、「じゃ!次は手出して!」と明るく声を出した。

されるがままの久世玲人の手を取り、同じく腕に消毒をしていると、ふと、硬い声で話しかけられた。


「……菜都、本当に大丈夫か?」

「…え?」

思わず手を止めると、久世玲人が真剣な眼差しで私を捉えている。


「大丈夫か?」

「え、と…。うん、…大丈夫…」


その眼差しから逃げられず、久世玲人の目を見つめながら素直に答えた。

先ほどの光景を思い出し、少しだけ体が固くなってしまう。


その様子に気付いた久世玲人は、私の手を握り、もう一度「本当に?」と問いかけた。


「うん…。怖かったけど…久世君が助けてくれたし…。ありがとう」

久世玲人のおかげで、大事に至らなかったのは事実。

お礼を言って、心配させまいと微笑みかけても、久世玲人は苦しそうに顔を歪ませるだけ。



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