いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
そういえば、久世玲人に屋上来いって言われてたけど…。

まぁ、遅れて行けばいいか…。佐山君も少しだけって言ってたし、そんなに長引くこともないだろう…。


視聴覚室に入ると、カーテンで締め切られている薄暗い教室に、佐山君が一人、後ろの席に座っているのが見えた。

お昼休憩に視聴覚室に来る生徒なんていないから、もちろん他には誰もいない。佐山君もそれを分かってて、ここを選んだんだろう。


ゆっくりと近付くと、佐山君は顔を上げて「…ごめんね、時間とらせて」と少しだけ微笑みながら謝った。


「ううん…。話しって…?」

「ま、座って?」

そう言って、佐山君は隣の席をポンポンと叩いた。


それに促がされるまま隣の席に座ると、佐山君は、フーッと息を吐き、私に体を向けた。


「なんか…、こうして原田さんと改めて話すって、初めてだね」

「あ、うん…。そうだね…」


高校1年の時から思い返してみると、確かに佐山君と2人きりでこうしてあらたまって話し合うのは初めてだ。いつも教室で少し話す程度だったから。


「ねぇ、原田さん。高1で初めて出会った時、俺の印象ってどうだった?」

「……へ?」

印象?

グッと身構えていたけど、予想外の質問に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。


佐山君の、印象…?


質問の真意が分からずじっと見つめていると、佐山君はクスリと笑って、もう一度言った。


「ね、どう思ってた?」


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