いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「え?え?」

予想していなかった佐山君の中断に、これから言おうとしていたことがすべてふっ飛ぶ。

まさか、ここで遮られるとは。


意表を突かれ、瞬きしながら止まっていると、佐山君は「ごめんね」と苦笑した。


「言ったよね?返事は今じゃなくていい、って。……ていうか、今されるのは正直なところ、イヤなんだ」

「……え?どういう…」

一体どういうこと?今、返事をされるのはイヤ?何で?何で?


若干パニックになっていると、佐山君はもう一度苦笑する。


「ごめんね、中断して。でも、僕も無鉄砲に告白したわけじゃないからさ。もちろん分かってるよ?僕の方が分が悪いって」

「えっと…」

「どんな事情があるにせよ、原田さんは久世と付き合ってるわけだし」

「うっ…」

久世玲人との関係には裏事情があると、佐山君も薄々気付いているんだろうか…。


何も答えられないでいる私に、佐山君は続けて言う。


「久世の存在に焦ってるのは事実だけど、返事を急かすつもりは全然ないんだ。むしろ長期戦?そりゃ、僕を選ぶって言うつもりだったなら、バンバンザイだけど」

「えっ!?」

「でも、原田さんは、そんな決断をしない。久世と付き合ってる事実がある今、僕の想いをすぐに受け入れるっていう選択ができる人じゃないでしょ?」


うぅ…た、確かに…。佐山君の言う通りだ…。

だって、今まさに、佐山君に同じことを言って断るつもりだった…。

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