いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
どうして私の思考が分かるんだろう…。

不思議そうな顔をしていることに佐山君も気付いたようで、少し笑いながら言った。

「それだけ、原田さんを見てきたってことだよ」

「…っ」

そんな台詞をサラリと吐き出され、私の顔はどんどん赤面していく。


今日、一体何度赤くなったことか。


「だからさ、じっくり、真剣に考えて欲しいんだ。久世と付き合ってるから僕とは付き合えない、なんていう短絡な思考は捨てて」

「佐山君…」

「というわけで、返事を聞くのは保留にさせてくれない?」

ここまで言われてしまえば、私の首は自然と、こくん、と頷いてしまう。


「よかった、ありがとう」

そう言いながら、佐山君は私にニコリと笑った。



――確かに、佐山君に言われた通り、私は真剣に考えようとしていなかったかもしれない。自分の中では答えを出したつもりだったけど…。

どうしよう、と悩んでいた割に、安易な理由をつけて逃げようとした。

佐山君の真剣な気持ちに対して、なんて失礼なことをしてしまったんだろう。


恥ずかしさやら、情けなさやら、申し訳なさやら、複雑で苦い感情が巡り、胸が締め付けられる。

唇を噛み締めるように俯く私とは反対に、佐山君はやっぱり笑っている。


「ま、僕のことが大キライって言うならしょうがないけど。その時は早めに言ってね」

「そんな…。大キライだなんて…、そんなわけないよ…」

「よかった、それは一安心」


私が落ち込まないように気を遣ってくれているのか、佐山君は重苦しい雰囲気にならないようにずっと笑っていた。


……ほんとに、優しい人…。

こんなに優しい人、大キライになるはずがない…。むしろ、私にはもったいないくらいだよ…。


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