いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
か、帰っちゃった…。

佐山君が先に帰ってしまい、教室に残されたのは、私と久世玲人の2人。

緊張感が漂ったまま、しーん…と静まりかえっている。



「………」


無言のまま恐る恐る久世玲人を見上げると、おもいっきり不機嫌な目つきでジロリと見下ろされた。

お、怒ってるよ…。

さっきの答えが気になっていたけど、それを聞き出す状況ではないと悟った。これは、相当機嫌が悪い。


久世玲人は私を見下ろしたまま、ゆっくりと口を開く。


「……ダッシュで行ってくるっつったよな?」

「ご、ごめ……」

「何でこんなに遅い?」

「いや、あの…」

「あいつ、何なの?」


眉を寄せたまま、久世玲人はジリジリと問い詰めてくる。

それから逃げるように、よろめきながら後ずさりするけど、そのうち壁に追いやられて逃げ場がなくなってしまった。

そして、久世玲人は私を囲むように壁に手をつき、鋭く見下ろしてくる。


「あいつと、何してた」


ヒヤリ、と背中に冷や汗が流れた。

厳しく問い詰める口調に怯んでしまい、言葉が出てこない。しかも、会話の内容が内容なだけに、素直に白状することもできない。

口を噤んでしまった私が気に入らないのか、久世玲人はさらに目を細め、より鋭い視線を向けてきた。

そこにいつもの優しさはなく、その瞳には焦りや苛立ちが垣間見える。


「俺には言えないことか?」

「そ、そんなこと…」


さらにグッと距離を詰められ、心臓がドクンと跳ねた。


何か答えなきゃ、って思うけど、それどころじゃなくなってしまう。


ち、近い…。


息が掠めるほど間近で見つめられ、こんな状況だというのに、私の心臓は、ドキドキと高鳴っていた。


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