いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
保健室に着くと運良く先生は不在で、授業をサボる言い訳も考えなくて済んだ。

それに安堵しつつ、はぁ、と小さく息を吐きながら椅子に座ると、佐山君が心配そうに話し掛けてくる。


「……原田さん、大丈夫?」

「あ、うん…、ありがとう佐山君。本当に、大丈夫だから…もういいよ」

これ以上を心配かけまいと、なるべく普段通りに返すけど、佐山君は苦しそうな表情をしながら私の前に座った。


「……もっと、僕を頼ってよ」

「……え…?」

「原田さん、さっきからずっと辛そうな顔してる」

「………」

鋭く指摘され、返す言葉が見つからない。


「……やっぱり、久世が気になるんだろ?」

「…え、と……」

「途中から、どんどん原田さんの様子がおかしくなっていくし…。何があったの?」


本当に心配してくれているのか、佐山君は真剣な表情で聞いてくる。

なんでもない、と適当に誤魔化すことができない…。それで、佐山君が引き下がるとも思えない。


「ごめん…、佐山君を頼りにしたくないってわけじゃなくて…。ただちょっと、私の中で整理しきれないことが起こって……」

「整理?……それって、久世の停学と関係あるの?」

「私の知らないところで、久世君が一方的に停学になってるかもしれなくて…」

「……それは、原田さんに関係あること?」

「う、うんたぶん…。いろいろあって、久世君に助けてもらったことがあるんだけど、でも、そのせいで停学になってるかもしれなくて…。それを、確かめたいの」


核心に触れずに伝えるにはなかなか難しいけど、それでも、佐山君は真剣に聞いてくれる。

そして、数秒間沈黙が続いたあと、佐山君は私の目を見ながら、ゆっくりと口を開いた。


「……確かめて、どうするの?」




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