いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
それから、住所と添付された地図を頼りに向かっていたけど、その途中、久世玲人から何度も電話がかかり、「やっぱり迎えに行く」と過剰なほど心配されてしまった。


……そんなに私の方向感覚が信用できないんだろうか。まったく。子どもじゃないんだから。


それを「大丈夫だってば!」と何度も言い聞かせながら、一時間ほどかけて無事やって来たけど…。


そびえ立つ高層マンションを見上げた。


ここ…?


メールで送られた住所とマンション名を照らし合わせた。


やっぱりここだ…。で、でかい…。


高級感溢れる佇まいに思わず怯みそうになったけど、勇気を出して足を踏み入れた。

広くて豪華なエントランスはBGMにクラシックも流れていて、どこかのセレブが住んでそうな雰囲気。

やっぱり、久世玲人に迎えに来てもらえばよかった…。1人だと気後れしてしまう。


管理人に怪しげな視線を送られつつ、部屋番号のインターホンを押すと、『そのまま上がって来い』と久世玲人からの返答があり、オートロックの扉が静かに開いていく。


緊張するな…。


エレベーターに乗り込み、妙にドキドキする心臓を落ち着かせようと、深呼吸を1つした。



久世玲人って、こういう所に住んでるんだ…。なんか、意外。


そういえば、私、久世玲人のこと何も知らないよね…。

普段、彼がどういう生活をしているのか、家族構成や、好きなことも、嫌いなことも。

何も知らないじゃん…。


本当の彼女じゃない、という現実がこういうことで身に染ていると、いつの間にかエレベーターは目的の階に到着したようで、扉がゆっくりと開いていった。


……変なこと考えてる場合じゃない。


本来の目的を思い出し、よし、と気持ちを切り替えながら足を踏み出した。



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