いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
ピーンポーーン――…


自宅前に到着しインターホンを押すと、しばらくして扉が開き、中からラフな恰好をした久世玲人が出てきた。

何故だかイジワルな笑みを浮かべている。


「1人で来れたみたいだな。迷子になると思ったけど」

「もう…、大丈夫って言ったでしょ」

「だってお前抜けてるし」


開口一番の言葉に思わず、ぷぅと頬を膨らませたけど、一週間ぶりに見た久世玲人の姿に、不思議な安心感が胸に広がっていく。


何でだろう…。

元気そうな姿を見たからかな…。いや、元気なのは当然か。病気じゃないんだし。


……でも、どうしてこんなに安心するんだろう。


まじまじと久世玲人を見ると、「何?怒ったのか?」と、不思議そうな顔して笑われた。


わわっ。

それに今度は、きゅうきゅうと胸が疼き始める。

言うなれば、それはあの困った症状の前兆のようだ…。


「菜都?」


何でだろう…。

たった一週間会ってないだけなのに、何でこんなに…。


呼ばれたことも気付かず不思議な感覚にそわそわしていると、久世玲人はますます怪訝そうな顔をする。


「おい。とりあえず、突っ立ってないで入れば?」

「……あ!うんっ、…お、お邪魔します」


ハッと我に返り、慌てて玄関に入った。

あぶないあぶない…。深く考え始めるところだった。


靴を脱ぎ、「こっち」とスタスタ先を歩く久世玲人のあとを付いて、部屋の中に足を踏み入れた。

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