いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
リビングに通されたあと、久世玲人は「適当に座っとけ」と言い残して、キッチンの方に向かっていった。

お言葉に甘え、ふかふかの黒いソファに座りながら、部屋をぐるりと見回した。


誰の趣味か分からないけど、部屋の中はモノトーンで統一されており、とてもシンプルだ。


いや、シンプルっていうか…。殺風景といえるかもしれない。

ムダな装飾品が一切なく、必要最低限の家具があるのみ。実は、ごちゃごちゃと散らかってる様子を想像していたのに、キレイに片付けられている。

意外とキレイ好きなのかもしれない。これも新たな発見だ。



そんなことを思っていると、久世玲人が冷蔵庫を開きながらこちらに振り返った。


「何か飲む?」

「あ、ありがと…」

「えーと…、ウーロン茶にコーラ、……オレンジジュース、ビール。あとは…えー…ジンジャエールにコーヒーにチューハイに水、あ、カルピスも」

冷蔵庫を見渡しながら、目に入ったらしい飲み物を次々とあげている。

……ちょこちょこお酒も入ってるのは気のせいだろうか。飲むわけないだろうに。


「す、すごいね。自販機並に飲み物が揃ってる」

「ああ、健司たちが置いて帰るから。ほぼあいつらの買い置きだから、遠慮なく飲め」

「えっと、…じゃあ、オレンジジュースを」


遠慮なくオーダーすると、久世玲人は「ほら」とペットボトルのオレンジジュースをポイッと投げてきた。


「わわっ」

弧を描いて飛んでくるペットボトルを慌てて受け取ると、「お、ナイスキャッチ」と久世玲人がおかしそうに言う。


………。


フツー、投げるかしら。


むむ、と無言の抗議を送りながらも、ありがたくいただくことにした。

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