いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
オレンジジュースを一口飲み、久世玲人の方に向くと、キッチンの近くにあるダイニングテーブルに座りながらコーラをグビグビと飲んでいた。

こっちに来ないのかな…?ま、別にいいけど。


「健司君たちは、よくここに来るの?」

「ああ、しょっちゅう。つーか、あいつらうちの合鍵持ってるから。ほぼ溜まり場になってる」

「ええっ、合鍵っ!?それって…ご両親も許してるってこと?」

「うち、離婚してて母親いねーから。親父も海外赴任で滅多に帰ってこねーし。放任主義ってこと」

「そ、そうなんだ…。え、と…兄弟とかは…?」

「いない。俺1人」

「そ、そう…」


それも、知らなかった…。

それじゃあ、久世玲人はこんな広いマンションに、1人で住んでるんだ…。サラッと言ってたけど、寂しくないのかな…。

私のそんな思いが表情にも出ていたようで、久世玲人は「あのな、この年で寂しいとか思わねーから。んな顔するな」と苦笑する。


「そうかもしれないけど、でも…」

私とは違う家庭環境に、どうしても戸惑ってしまう。あんまり聞いちゃいけなかったかな、と思ってしまう。

しゅん、と勝手に落ち込んでいると、久世玲人はまた苦笑しながらコーラを飲んだ。


「じゃあ、寂しいって言ったら、一緒に住んでくれんの?だったらマジで言うけど」

「なっ!何言ってんの…!!そんなことっ…!!」

「……冗談だって。そんなあからさまに困った顔すんな」


そう言うと久世玲人は飲み終わったペットボトルをペキペキと潰しながら、再び私に向いた。


「それより、そんなこと聞きにわざわざ?マジメな菜都が学校サボってまで?」



……ハッ。

そういえば、こんな話しをするためにここに来たんじゃなかった!!

本題に入らなきゃ!


当初の目的を思い出し、けほん、と咳払いを一つして久世玲人に向いた。


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