いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
見つめ合うこと、約5秒。

その間、この空間だけ時が止まったような気がした。


しばらく固まっていたけど、

「邪魔」

久世玲人の短い一言で、ようやく健司は我に返った。


「えー、と…おジャマしましたー……」

はは、と気まずそうに笑いながら、ゆっくりとドアを閉めていく。



み、見られた…見られた……

押し倒されている状態で、久世玲人の手はスカートの中……

制服もはだけ、下着も丸見えで…

こんな状況を…


「―――!!」

慌ててシーツをたぐり寄せ、真っ赤な顔でパニックになっていると、再び部屋のドアがそーっと開いて、健司が顔を覗かせた。


「玲人、ちなみに、……それは、同意?」


様子を伺いながら訊ねる健司に、久世玲人は思いっきり眉を寄せ、睨み付けている。


「じょ、冗談だって!わりっ!じゃ!……ごゆっくり!」


そう言って慌ててドアを閉めていく健司に、久世玲人は「……はあー…」と盛大なため息を吐いた。


「……萎えた」

ドサッと隣に倒れこみ、「あのクソ野郎…」と忌々しそうに呟きながら、私の腰に手を回してギュッと抱き付いてくる。


「菜都?―――大丈夫か?」


何も反応を見せない私に、久世玲人が心配そうに問い掛けてくるけど、


「菜都?」


呼びかける声を遠くに聞きながら、いつの間にか私は放心状態になっていた。


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