いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
そういえば、佐山君の告白にも答えなければいけない。

ちゃんと考えてって言われたけど…。

そうするつもりだったけど、久世玲人を好きだと自覚した今、佐山君の想いにはこたえられない。

「あの、佐山君…?」

「……何?」

「今日の放課後、少し時間あるかな…?話しが、あるの…」

いつまでも、返事を先延ばしにするのはよくない。そう思って、少し緊張しながら訊ねてみると、佐山君は私を見ながら少し考えていた。

そして、ゆっくりと口を開く。


「…ごめん。今日はちょっと…」

「何か、用事があるの?」

「あー…うん、まあ…」

「そっか…じゃあ、また今度…」

「今、言えないこと?」

「う、うん、…ここじゃ、ちょっと…」

「そう…」


少し、空気が重い気がする。もしかしたら、佐山君も勘付いているのかもしれない。

2人の間になんともいえない空気が流れていると、どこからか、クラスの男子の声が聞こえてきた。

「あいつら、怪しくね?実はデキてるとか」

「久世がいない隙に?佐山と原田、結構勇気あるな」


……なんとなく、昨日のことで噂されるだろうと思っていた。陰で色々と言われるのは久世玲人のおかげで結構慣れたけど、やっぱりいいもんじゃない。


黙ったまま俯いていると、佐山君が立ち上がる気配を感じた。


「くだらない」


その低い声に、少し驚いた。

いつもの温厚な佐山君とは違うその様子に、クラスの皆も少し驚いている。


「……佐山君?」

声をかけても、いつもの笑顔は返ってこない。

佐山君は何も発することなく、そのまま教室を出て行った。


どうしよう…追いかけるべき…?

いや、でも、ここで私が動くと、またややこしくなるかも…。

少し心配だけど、出ていく佐山君の背中を見つめることしかできなかった。


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