いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
それから2時間後。

「いらっしゃいませ!」

カフェは思わぬ大盛況で、幸か不幸か、衣装を恥ずかしがってる暇すらなかった。

それに、同じ衣装を着ている子が他にもいるせいか、慣れてしまった。せっせと働く私に、誰も注目していないし。


「お待たせしましたー」

「お、さーんきゅ。ねぇ、おねーさん、このあと時間ある?」

「俺たちと一緒に遊ばない?」

「……ごめんなさい、忙しいので」


こんな格好をしているせいで声をかけられてしまうけど、それにも慣れてしまった。ナンパ目的でやってくる他校の男子学生も多い。

私に声をかけるなんて最初はビックリしたけど、それもこの衣装のせいだ。


「可愛いね、名前何ていうの?」

「すみません、忙しいので…」

「いーじゃん、教えてよ」


困ったな…。

キッパリと断っても、しつこく声をかけられている。

お客さんだけど、もう無視してしまおうか…。

「ねぇ、名前教えてってば」

どうしよ…まぁ…名前くらいなら…

対応に困ってしまい、もう名前を言ってやり過ごそうとしたその時。




「―――――おい、何してる」



後ろから、聞きなれた低音の声が響いてきた。


この声は…。


ヒヤリ、と背中に冷や汗が流れた気がした。




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