いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
男たちが逃げ帰ったあと、久世玲人の視線は私に移った。

……ものすごく、不機嫌そうに眉をひそめている。

ううっ…こわい…。


その視線が、ゆっくりと下におり、そしてまた上へとあがる。

「菜都、……何、その格好」

「いやっ…あのっ…」

不愉快そうな声と表情に、ビクビクと心臓が早鐘をうつ。説明の言葉がうまく出てこない。


「ごめん久世君!私たちが無理やり原田さんにお願いして…」

その様子を察した文化祭実行委員が、慌てたように久世玲人に説明してくれるけど、耳に入っているのかいないのか、その声には反応せず私を見据えたまま。


「すぐに着替えろ」

「あぅ…でも…」

「いいから、早く」

戸惑う私の声も聞かず、久世玲人は腕を掴みこの教室から出ようとする。

私も着替えたいのは同感だけど、まだ仕事が…。

変なところでマジメな性格が邪魔してしまう。


困り顔で文化祭実行委員を見ると、「いいからいいから!」と手を払われ、さっさと行け、という合図をされた。

忙しさより、久世玲人を怒らす方が大変なようだ…。
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