いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
久世玲人に引き連れられるまま、着替え専用として使っている空き教室へと入った。

「さっさと着替えろ」

そう言ってドカッと椅子に座り、「ありえねえ」などとまだ文句をブツブツ吐いている。


私もあの衣装はありえないと思っていたけど、……そんな露骨に態度に出さなくても…。

そこまで不愉快そうにされると、逆に傷ついてしまう。

そりゃ、全然似合わないって分かってるけど、不評すぎる…。頑張って着た勇気だけでも称えてくれればいいものを…。

軽くへこんでいると、久世玲人はまたイラついたように私に向かった。


「何してんだよ。さっさと脱げ」

「脱げって…。あ、あの…できれば外で待っててもらいたいんだけど…」

「いいから、早く着替えろ」

いいからって、私はちっともよくない…。

しかし、外に出てと押す勇気は今の私にはなく…。

早々に諦めながら、衣装に手をかけた。幸い、着替えやすい構造になっている。


一応、見えないように着替えることはできるけど、これはこれで恥ずかしい…。


恥ずかしさをグッとこらえながら着替えていると、久世玲人が突然立ち上がり、私の元にやってきた。

「菜都、さっきの説明しろ」

「えっ…!?」

ていうか、今まだ着替えてるんだけどっ!?

脱ぎかけのブラウスが肌蹴ないよう慌てて手で押さえるけど、久世玲人は気にした様子もなく目の前に立ちはだかる。

「飲み物作る仕事って俺に言ったよな?どういうことだ」

「いやっ…あのっ…そうなんだけどっ…」

「どうしてあんなの着たわけ?」

「え、とっ…あれはっ…」

いきさつを説明したいところだけど、この状況と久世玲人の様子に焦ってなかなか説明できない。

あたふたと焦っていると、久世玲人は「はぁー…」とため息を吐きながら私をゆっくりと引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。

< 369 / 446 >

この作品をシェア

pagetop