いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
その後も、「本当かよ」と問い詰められていたけど、逃げるように飲み物を買いに行き、どうにか適当にはぐらかすことができた。

別に白状したところで何もなかったと思うけど、なんとなく言いにくいし…。


これ以上聞かれませんように…と願いながら、2人分の飲み物を買って教室に戻ってくると、久世玲人はまだ窓からイベントの様子を眺めていた。


「……何見てるの?」

聞きながら隣に立つと、久世玲人は「ほら」とあごでステージの方を差した。


「あいつが出てる」

「あいつ?」

誰だろう、と見下ろすと、ステージにいたのは佐山君だった。少し照れくさそうに、居心地悪そうに立っているのが分かる。

その様子を、久世玲人は無表情のまま眺めていた。

「5位だってよ」

「そ、そう…」

相槌だけ返すと、久世玲人がこちらに視線を向けた。


「……気になるか?」


……どういう意味で聞いてるんだろう…。

その言葉の真意が分からないけど、佐山君のことはどうしても気にしてしまう。

まだ、微妙な関係のままだからだ。

告白も断りきれていないし、早く話をしないといけないって思うけど…。


黙り込んでいる私を、久世玲人がじっと見つめてきていた。


……何て答えよう…。



2人の間で沈黙が続くなか、賑わっている外の喧噪が、この静かな教室にまで響き渡っていた。

イベントの盛り上がりは最高潮。



『それでは、いよいよ第1位の発表です!!』

『栄えあるミスターの称号を獲得したのは――――』


『2年B組、久世玲人君っ!!』


名前が発表された瞬間、観客から女の子の歓声と盛大な拍手が沸き起こった。


…………。


このタイミングで…

< 372 / 446 >

この作品をシェア

pagetop