いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
イベントが女子のミスコンに突入すると、久世玲人はステージに向けていた視線を私に移した。

「……なぁ菜都、もう帰らねえ?」


……えっ?

帰る!?

突然の帰ろう宣言に少しビックリしてしまった。いきなりすぎて。


何で…?

でも、帰るって、そんな急に言われても…


「片付けもあるし、たぶん夕方じゃないと…」

「そんなにかかるのか?」

ほんとに、文化祭の進行予定を知らないみたいだ。

早く帰りたいみたいだし、このまま何もせず夕方まで待たせるのもな…。元々、今日は学校に来るつもりもなかったらしいし…。


「あの…先に帰ってもいいよ…?何もすることないし、ヒマでしょ?」

「いや、待つ。うち連れて行こうと思ったけど、夕方までかかるなら送って帰る」


その言葉に、再び心臓がドキドキと騒ぎ始める。

うちって……久世玲人の家っ!?

えっ…!?な、なんでっ!?

あまりにもサラリと言われたけど、今の私にはかなりの威力がある。


家って…家って…!!

この前の光景が思い出され、カーッと顔が赤くなる。恥ずかしさをごまかすため、ゴクゴクとジュースを流し込んだ。


思い切って、「どうして?」って聞いてみようか…

本当に、一体どういうつもりで…


心臓をバクバクさせながらチラリと久世玲人を見上げたその時、再び司会の声が教室に響いてきた。


『さぁ、続いて第8位の発表です!!』

『第8位、――――2年B組、原田菜都さん!!』



……………ぶっ!!


思わず、飲んでいたジュースを吹きこぼした。


え、…………ええっ?


ケホケホと咳き込みながら状況が飲み込めない私の隣で、久世玲人も「ゲホッ」とむせていた。


< 374 / 446 >

この作品をシェア

pagetop