いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「く、久世君っ…離してっ…」

「何で?」

「何でって…、ここ、教室だしっ…誰か来るかもしれないしっ…」

「関係ねえよ。それより早く帰るぞ」

「だ、だからっ…片付けがあるから帰れない……ていうか離してっ…」

なんとか離してもらおうと懇願するけど、久世玲人の腕は私に絡まったまま、なかなか離れない。


何で…何で離してくれないのっ…?

この状況に、私もいっぱいいっぱいだ。久世玲人の心が見えない今、嬉しさよりも苦しさの方が大きい。

顔を真っ赤にしながら泣きそうになっていると、久世玲人はまたおもしろくなさそうに呟いた。


「……マジで気が気じゃない」

「え…」

「自分がどういう目で見られてるか分かってんのかよ」

「どういう目って…」

何が言いたいの…?

その言葉の意図を探ろうとするけど、またさらに腕の力がギュッと強まり、それどころではなくなった。


「少しは自覚しろ」

「な、なにっ…」

「いいか?変な奴が近付いてきたら、すぐ俺に言え」

「変な奴って…」

「……他の男にこんなことさせたら許さねえから」

そう言って久世玲人は、私を抱き締めたまま、首筋にキスを落としてきた。


「ひゃっ…!!」

こ、こんなことって…キスのことっ…!?

その唇は何度も首筋を這い、時折、頬や耳にもキスをされる。


「やっ…久世君っ…やめてっ…」

「……言っただろ、菜都は俺のって。俺から離れるな」


どうしようっ…また、泣いてしまいそうになるっ……

お腹にまわる久世玲人の腕をギュッと握りながら、溢れそうになる涙を堪えた。


そんなこと言われると、キスなんてされると、深い意味を求めてしまう。都合よく考えて、期待を持ってしまう。


――――自惚れてもいいってことなの…?




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