いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
心のリミットを超え、久世玲人に対する想いが溢れそうになっていたその時、コンコンと教室のドアがノックされた。

――!!

ビクっと体が揺れ、一瞬で現実に引き戻される。

だ、誰か来たっ!?……見られるとマズイっ!!離れなきゃっ!!

慌てて久世玲人の腕を振り払い、その体をドンッと突き放した。


「おい、」

「だ、だって…!!」

憮然とした顔で私を睨む久世玲人を、今は気にしてられない。「は、はいっ!」と外に向かって返事をすると、クラスメイトの女子が入ってきた。

私と久世玲人を見て、少しだけ気まずそう。

「あ……お邪魔してごめんね。さっきの衣装、他の子が着ることになって、取りに来たの」

「そうなんだ、ごめんね…!」

そういえばと、脱ぎっぱなしだった衣装を慌てて畳もうとすると、その女子は「いいからいいから」とそのまま受け取った。

「そうだ原田さん、時間あるなら、ちょっとお願いしたいことがあるんだけどいいかな?」

「な、何…?」

「実は在庫のオレンジジュースが切れそうで、今先生が買いに行ってくれたの。1階まで取りに行ってもらえるかな?今人手が足りなくて…」

「ああ、うん、大丈夫だよ」

「ありがとう、助かるよ!じゃあよろしくね」

そう言ってその子は衣装を持って、教室を出て行った。



「……えーと、…じゃあ、取りに行ってくるから…」

「俺も行く」

「えっ!?いいよいいよっ」

「1人じゃ重いだろ」

「だ、大丈夫っ!先生もいるみたいだし、取りに行ったら、……すぐ戻ってくるから」


まだドキドキと心臓が騒ぐ。

そんな雰囲気じゃなくなったけど、先ほどのことが頭から離れない。



戻ってきたら、今度こそ、久世玲人に確かめたい。

さっきの言葉の意味を、―――キスの意味を。


それまで、心を落ち着かせよう…

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