いつわり彼氏は最強ヤンキー［完］
小さく震えながら溢れ出る涙を止められないでいると、

「……ごめん。冗談」

その優しい声とともに、ゆっくりと腕が解かれていった。


締め付けられていた力がなくなり、その場に崩れおちそうになるけど、さり気なく佐山君が支えてくれたのでなんとか立っていられる。


「ごめんね…。本当に終わりにするつもりだったんだけど、つい、最後の悪あがき」

「…………」

「最後まで“イイ人”でいれば良かったんだけど」


胸が詰まって何も返すことができない。ただ泣きながら、佐山君を見つめ返すだけ。


「……キスして、ごめん。―――でも、許してくれなくていいから。…嫌ってもいいから」

「…………」

「怒ったなら、ムカついたなら、いくらでも殴っていいから」


そう言う佐山君の顔はとても穏やかで、それにまた涙が溢れてくる。

その言葉に、ふるふると力なく首を振った。


―――許すとか、許さないとか、嫌いになるとかじゃない。


もちろん、……キスなんて簡単にしていいものじゃない。

二度と、あってはならないに決まっているけど。でも…


……それでも、私は佐山君を心から嫌いになることなんてできない。


伝わってくるその想い。その想いと同じ感情を、私は知っているから――…。


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