いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
それから一週間、久世玲人は学校に来なかった。

もしかしたら、朝ひょっこり迎えに来てくれるかも、という私の薄い期待は見事に外れ、一人きりの登下校だった。

もちろん、久世玲人からは何の連絡もないし、私も連絡する勇気がないままだ。

連絡したいと思うけど、ノミの心臓を持つ私には、それができないのだ。



「おはよう、原田さん」

「…お、おはよ…」

佐山君はあれからも変わらず挨拶してくれる。

しかし、それからいつもの世間話に進むことはない。

普通に話ができる度胸は私にはないし、佐山君も、もしかしたら私にあまり関わらないようにしているのかもしれない。


と、思っていたら、今日は普通に話し掛けられた。


「ねぇ、原田さん。最近久世見ないけど、どうしたの?」

「えっ…」

「何かあったの?」

「あっ、え、えーと、」


まさか、久世玲人に避けられてる、そんなことなど言えるはずなく。

しどろもどろになっていると、佐山君が少し厳しい顔つきになって言った。


「あのさ、前から思ってたんだけど…」

「な、なにっ…」

まさか、また何か言われる!?

その表情と話の切り出しに、少し身構えた。


「久世って……出席日数足りてる?」

「………へ?」

思いもしなかった言葉に、ポカンと口を開けてしまった。

……出席日数?

「いや、一学期なんてほとんど学校来てなかったろ?最近は毎日来てたみたいだけど、停学期間もあったし、もう一週間も来てないし」


い、言われてみれば……

そんなこと、思いもしなかった。


「留年なんてならないように、しっかり教育しなきゃ」

「は、はは…」


教育って…今私たち、そんな雰囲気じゃないんです…

と、思いつつも学級委員のありがたい忠告に「い、言っておく」と彼女らしく答えておいた。


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