いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
嬉しいけど、恐い。

恐いけど、嬉しい。


そんな複雑な感情を抱えながら屋上に向かうと、いつもの場所で、フェンスに背を預けた久世玲人が座っていた。


緊張は、最高潮。

ドッドッドッ…と心音が自分でも聞こえるくらい。


騒ぐ心臓は治まる様子なく、変な汗を浮かべながらゆっくりと足を進めた。

久世玲人も私に気付き、立ち上がってこちらに向かってきている。


一週間ぶりに見る久世玲人は、やっぱりいつもと変わりなくて、その表情もいつもと変わりなくて、―――あの時の、冷たい目じゃない。

むしろ、穏やかで、……穏やかすぎて……


「よお」

「く、久世君…」

「悪かったな、呼び出して」

「い、今までどうしてたの…?ずっと学校来なくて…」

「……ああ、」

「出席日数とかも、危ないって…」

「……ああ」

「ずっと、心配で…、健司君に聞いても、知らないって言うし、…シカトされてるって言うし…」

「…………」

「ほんとに、ずっと心配で、……私が、何か怒らせちゃった…?考えたんだけど、分からなくて…」

「なぁ、菜都」

「どうして…、なんで…、あの時」

「菜都」


静かな声で、制された。

止まらない私の言葉を遮り、久世玲人は私を真っ直ぐ見つめてくる。


……だめだ…、涙が出そう…

おそらく、イヤな予感は当たっている…

これから続く言葉は、きっと―――…



「菜都、……解放してやる」

< 399 / 446 >

この作品をシェア

pagetop