いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「何でっ…」と繰り返す私に、久世玲人は少し困ったように笑った。
「何でって、菜都はその方が都合いいだろ。……俺が気付いてないと思ってたか?」
「…どういう意味っ…?」
「俺と一緒にいる時、お前いつも困った顔してただろ。笑顔になることなんて、ほとんどなかった。困惑してるか、泣きそうになってるか」
「そ、そんなことっ…」
「まぁそりゃそうだよな。好きでもねえ奴と一緒に行動させられて」
そんなことない。
いや、確かに、最初の頃はそうだった。困惑しかしてなかった。
ただ、自分の気持ちに気付いてからは、その困惑はまた別の意味があり、泣きそうなのも“好き”の想いが溢れそうだから。
分かってない。
久世玲人は全然気付いてない。
一生懸命首を振っても伝わらず、久世玲人は私の横を通り過ぎて屋上の扉を開けた。
「悪かったな。……でも安心しろ、もう菜都には関わらねえから」
振り向きざまそう呟き、そして、制止する間もないまま久世玲人は「じゃあな」と屋上を去っていった。
――――関わらない…
突き放されたその言葉に、私はただ、呆然とその場に立ち尽くすだけだった。
聞きたいことも、言いたいことも、山ほどあったのに。
その一言に何も考えられなくて…。
こうして、私たちのいつわりの関係はあっけなく解消されたのだった。
「何でって、菜都はその方が都合いいだろ。……俺が気付いてないと思ってたか?」
「…どういう意味っ…?」
「俺と一緒にいる時、お前いつも困った顔してただろ。笑顔になることなんて、ほとんどなかった。困惑してるか、泣きそうになってるか」
「そ、そんなことっ…」
「まぁそりゃそうだよな。好きでもねえ奴と一緒に行動させられて」
そんなことない。
いや、確かに、最初の頃はそうだった。困惑しかしてなかった。
ただ、自分の気持ちに気付いてからは、その困惑はまた別の意味があり、泣きそうなのも“好き”の想いが溢れそうだから。
分かってない。
久世玲人は全然気付いてない。
一生懸命首を振っても伝わらず、久世玲人は私の横を通り過ぎて屋上の扉を開けた。
「悪かったな。……でも安心しろ、もう菜都には関わらねえから」
振り向きざまそう呟き、そして、制止する間もないまま久世玲人は「じゃあな」と屋上を去っていった。
――――関わらない…
突き放されたその言葉に、私はただ、呆然とその場に立ち尽くすだけだった。
聞きたいことも、言いたいことも、山ほどあったのに。
その一言に何も考えられなくて…。
こうして、私たちのいつわりの関係はあっけなく解消されたのだった。