いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
いつまでも考えるのはやめて、いい加減、忘れることに専念しなきゃな…。

そう思っていても、やっぱり久世玲人たちグループは常に噂の的になっていて、あちこちで話題になっているのが耳に入る。

学校中、至るところで“久世玲人”の名前が聞こえてくる。

噂の大半は大したものじゃないけど、中には女絡みの話題もあり、「今度の彼女は年上美女」とか、「それも三日で別れた」とか、その真偽は分からないけど、さすがにこの手の話題は辛い。


そういうのを聞くたびに、毎度心が痛む。


―――やっぱり、私みたいなつまらない女なんて、久世玲人がいつまでも気にするはずがない。

そう思う反面。

―――菜都しかいらない、って言ったくせに…。

とも思って、胸が苦しくなるのだ。


いっそのこと、健司や陽、泰造をつかまえて久世玲人の近況や噂の真偽を確かめたいけど、あの日以来、彼らとも接点がなくなってしまった。

声をかけられることもない。

久世玲人が私と関係を絶つと決めた以上、彼らにも接触させないように徹底しているのかもしれない。




こうして、いつまでも久世玲人のことを考えていたある日のこと、廊下でボーッと外を眺めていると、ふいに、隣に人が立つ気配を感じた。

「何してるの?」

「あ、……佐山君…」

「もしかして、また久世のこと考えてる?」

「えっ!?い、いや…」

佐山君とは、少しずつだけど前のように話せるようになっていた。佐山君が色々と気を遣ってくれているんだろうけど。


< 405 / 446 >

この作品をシェア

pagetop