いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「とにかくっ、誤解なのっ…!…私はっ、佐山君を選んだわけじゃないっ…」

「だから、今さら言い訳なんて――」

「聞いてよっ…!」

なかなか聞こうとしない久世玲人に強く言うと、不機嫌ながらも渋々といった感じになった。


「あの時っ、佐山君と一緒にいたのは理由があってっ…、」

「―――理由?」

「実はっ…、少し前に、佐山君から……そのっ…こっ、告白をされて…、」

そう言うと、久世玲人はますます不快そうに眉を寄せる。


「……何でその時俺に言わねぇんだよ…」

「い、言いにくくてっ…!そ、それに、その時はすぐ断るつもりだったのっ…、仮にも、久世君と付き合ってたんだしっ、」

「……で?」

「で、断ろうとしたらっ、……もう一度ちゃんと考えてほしいって、」

弱々しい声であの時のことを話すと、久世玲人はチッと舌打ちをする。


「そう言われてっ、正直なところっ…、少しだけ揺らいだこともあった…。久世君と出会う前、私は佐山君に憧れてたから…」

正直にあの時の気持ちを打ち明けると、久世玲人は少しの間黙り込み、冷たい視線を向けながら小さく笑った。


「……じゃあ、良かったじゃねえか。お互い想いが叶って」

「そうじゃないっ…!だってっ、…だって、私はっ、久世君のことがっ…、久世君への気持ちに気付いてっ、……自覚しちゃったからっ…」

「―――――は?」


今、勢いにまかせてサラリと言ってしまったけど、今さら止められるはずもなかった。

久世玲人も、私を見つめたまま固まっている。

「久世君が好きって、気付いちゃったからっ…、だからっ、佐山君を受け入れるなんてできなくてっ…、ちゃんと断ろうって、ずっと思ってて、…それで、文化祭のあの日、……佐山君に断ってたのっ…」

「……………」

「佐山君も納得してくれたんだけどっ、そのあとっ、……突然キスされてっ、抱き締められてっ、」

「……………」

「ビックリしてっ、恐くてっ…、でもっ、振りほどけなくてっ…。受け入れたわけじゃないのっ…、選んだわけでもないっ…」


溢れそうな涙を抑えながら必死に言葉を綴る私を、久世玲人は何も言わず、固まったままだった。

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