いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
「この歳で転ぶとか、マジであり得ねえんだけど」

「……うっ…」

「しかも体育の時間って。一体何やってたんだよ」

「うぅ…、さ、さぼってた人に言われたくないよ…」


………時々、本当に疑いたくなるけど。


チクチクと小言を言いながら消毒をする久世玲人を見下ろした。


好きだと言われたのは、あの日、あの一回だけ。

宣言通り二度と言わなかったし、それ以来、今までも一度も言われない。

どうやら相当照れくさいらしく、本当に言いたくないらしい。


「他に痛いところは?」

「……ない」

「本当に?腕も見せろ」

「……大丈夫だよ」


と言っても聞き入れてくれるはずもなく、もうすでに体操服を捲り上げて腕を確認している。

こういう、過剰に心配性なのは相変わらずだ。


「傷は……ないみたいだな」

「ね、大丈夫って言ったでしょ」

「……ったく、心配させんなよ。こっちの身にもなってみろ」

「………心配なの?」

「当たり前だろ」


当然のように言い放たれ、少しだけポッと頬が染まる。


転んだだけなのに。

こんなに気にかけてくれるのは、やっぱり好かれてるからかなぁ、なんて思っちゃったり。


うぬぼれたくて、にへら、と頬が緩んでしまう。



「ふふ……ありがとう」

「何笑ってんだよ」

「ううん」

「……変な奴」


それでもへらへらと微笑む私に、久世玲人も小さく苦笑する。

そして、少しだけ腕を引き寄せられ、頬に掠めるようなキスを落とされた。

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