JUNKー衝動ー
十字路の曲がり角から人が飛び出してきた。

そこの角は俺の進行方向で…。

そいつは勢いのついたまま、俺がいる方へ曲がった。

(…っつ?!)

お互いに気づくのが遅く、本気で危うかった。

俺が飛び退くように避けるのが後少しでも遅かったら正面衝突してただろう。


そんなわけで俺は避けたため立ち止まったが、そいつはそのまま走って行った。

何となく腹立たしく思い、舌打ちをしてそいつの後ろ姿を見やる。


(…女じゃん)

長い黒髪が風になびき、ワンピースがひらめいている。

白いワンピースは赤い模様が…

…って。



…あの子?


すれ違ったのは一瞬だったし、顔も見てない。

だけど、俺にはあの子だという確信があった。


(…っ追いかけるか…!)

何で外走ってんのか知らないけど。
追いかけねばならないということだけ浮かんだ。
俺は元走った道をまた走りだした。














…思っていたより彼女は速くなかった。

だんだん距離は詰められている。

もうちょっと頑張れば、少しで追いつくかもしれない。

あの子は俺が追いかけているのに気づいていなかった。

何度も人や物にぶつかりかけ、すれすれで避けてる。

それだけ、必死に走ってる、ということか。

(よくよく見ると靴履いてないし…。
裸足であれだけ走るって…。)


余裕が出てきたおかげで色々考える。

(大丈夫か…?
ここら辺、ガラス瓶とかよく割れてるぞ…)

怪我しないといいけど。
心配になってきた自分。
この先何かあったっけ…と考えると。


(あった…)

交通量が異常に多い道路が、このすぐ先に。


…別に普段ならかまわない。
信号見て渡りゃいいだけだ。


でも彼女の、無我夢中の走り方は…。

(…ヤバい、かも…)

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