JUNKー衝動ー
「……あー…」

これは俺のせいなのか…?

少女の過剰とも言える反応に声とも息ともつかないものがこぼれた。

それすらにも小さく震えるのを感じて、俺はなるべく、ゆったりと優しく話し掛けた。


「…腕、解くから、よけて?」

まずはこの体勢をどうにかしないと、落ち着いて話も出来やしない。

そう判断して両腕を彼女の体からどけた。


少女は腕を解いてからも、暫く戸惑ったような顔をしていたが、やがておずおずと立ち上がった。

俺もその後に続いて立ち上がり、痛む首の辺りを揉んだ。

ギシギシという痛みに顔をしかめながら、俯く少女に近づいた。

「…大丈夫か?」

「……」

「…怪我してないか?」

「……」


色々話しかけるも少女は無言。

(…まぁ、いいか…)

事故りかけたのがよっぽどのショックだったのかもしれない。

それか、単なる人見知りなのかも知んないし。


俺は大して気にせず、これからどうしようか考えた。


(…とりあえずアパート行くか…)

ずっと此処にいる訳にはいかないだろう。
…つかソレは却下だ。


周りを見渡せば、少し離れた所に人だかりが出来ている。

そこから届く沢山の視線。

だんだん減ってはいるものの、野次馬達の好奇の目に晒され続ける気はない。

野次馬達の顔は心配してんのか、面白がっているのか、俺には見分けがつかない。


…ただ、本当に心配してんだったら、突っ立ってるのは違うだろ。



俺は軽く野次馬達を睨んだ所でふと思い出し、せいぜい俺の肩まであるかの身長の少女に目をやる。


…俺の帰り道を逆走、…要はアパートから走っていただろう彼女は、つい今日まで熱で寝ていたはず。

その彼女が、何で今、外で逃げていたのだろう?
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