JUNKー衝動ー
しゃがみ背を向け、顔だけを彼女へ向けた。

ますます不思議そうな顔をする少女に

「…おぶってやるから」
と呟いた。

…が、少女は暫く首を傾げたままで、
…数秒後、はっとした顔をしたがオドオドと戸惑っていた。

手を出したり、引っ込めたり、
なかなか来ない少女を見やって

「…おいで」

くいっと首で催促すれば、
ゆっくりと伸びて来る手が肩に捕まった。

徐々に徐々に、かかってくる体重と体温。

それが全部かかってきたのを確認して、腰を上げる。

「…っと」と呟き、俺は彼女をおぶって歩き始めた。




…店から出てきた頃は明け方だったのに、
日はすっかり上がっていた。

少女の長い髪が首筋をくすぐる。

俺は偶に来るその感触を
感じないようにするため口を開いて気を紛らわす。

「…ちゃんと掴まないと落ちるぞ」

未だに躊躇っている彼女は、
俺の負担を減らそうとしてくれているのか、
肩にしっかり掴まってこない。

が、俺としては何だか危なっかしく感じて気が気でない。

それでも少女はオドオドと力を込めようとしない。

背中でそわそわとしているのを感じられて、
俺はやけに可笑しく、くすぐったかった。


毎日通る道が何故か、新鮮に感じて
俺はアパートに向かう足を少し、速めた。
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