同居から始まる恋もある!?
Summer #9
―――
――
―
別に酒に詳しいわけじゃない。
ただ酔えればなんだって良かった。けど、チェーン店のような明るい雰囲気の店にひとりで入る気分でもなく、
たまたま通りかかった小さなバーでショットを数杯。
頬が痛い。
彼女に、学費を払えきれなくて大学を辞めたことを言ったら、容赦なく頬を引っ叩かれた。"なぜ何も相談してくれなかったの"という言葉と一緒に。
付き合って1年ちょっと。
きちんと好きだったし、大事にしたかった。だからこそそのとき別れを告げたのに、彼女は泣きそうな顔をしながらもう一度手を振り上げた。
ぎゅっと目を瞑った。
ぐらぐらと揺れる頭を抱えながら、俺はカウンターの端で壁にもたれていた。
こと、と注文もしていないのに一杯のグラスが置かれる。
『なんですか、コレ』
『ウーロン茶』
『…ここ、バーですよね』
『お客様が望まれるドリンクをつくることが、バーテンダーの仕事だよ』
ゆっくりと顔をあげれば、ニコリと、まるで邪気のない微笑みを浮かべる男。
それがマスターとの出会いだった。