同居から始まる恋もある!?
深山芹生という人間は、まるで神様に特別愛されて、たくさんのギフトを手に生まれてきたようなひとだった。
誰もが振り返るほど恵まれた容姿、頭脳明晰、スポーツだって万能だ。
周囲の人間は、みんな口々に芹生を褒めて、大きすぎる期待を勝手に抱いて、けれど芹生は文句ひとつ言うことなくきちんとそれに答え続けてきた。
いつだって、わたしの前を歩き続けた芹生。
時折、振り返っては、きらきらと輝くような美しい微笑みを浮かべて「サチ」とわたしの名前を呼んだ。
ずっと芹生に追いつきたくて、隣に並びたくて、必死にその背を追いかけていた。
憧れが、好きに変わったのはいつだっただろう。もうずいぶん前のことだから、覚えてもいないけれど。芹生を好きになることは、わたしの中で必然だった。
芹生は、そんな憧れの人だったはずなのに。
「……、どうして、突然いなくなったりしたの?」
「んー、昔過ぎて忘れた」
「心配したんだよ」
「あ、それは嬉しい。ありがとう」
わたしが納得出来るような説明をとてもしそうにない芹生に内心溜息をつきながら、せめてものもてなしとして、彼の前にアイスコーヒーを差し出した。