同居から始まる恋もある!?
「サチ、大丈夫?さっきからボーっとして」
物思いに耽っていると、にゅっと芹生が下から覗き込んでいて、思わず「っひ!」と小さな悲鳴をあげてしまう。
それに不服そうな顔をして、「失礼な」と芹生が口を尖らした。
芹生が手に持っていたクーポンを見てみれば、この大学の学生達もよく利用する居酒屋『よろこんで』のものだった。安い旨いで連日沢山のヒトが訪れる地元の人気店。
人気メニューナンバー1は、ふっくら甘い厚焼きタマゴ。
夏の特別イベントで、スイカフェスタを開催中。
というか、この店って。
視線をあげると、ふたりとのあいだに少し距離が出来てしまっていた。
芹生と美帆はすっかり仲良くなったようで、わたしの前を並んで楽しそうに歩いている。
―相変わらずの天然タラシ。
むすっと黙り込んでいると、芹生が振り返って、「サチー、迷子になるからちゃんとついてこいよ」と声を掛けてきた。だれがなるかっての。
子供じゃないんだから。