同居から始まる恋もある!?
「そんなぁ……」
美帆は、抱きつくように芹生にしなだれかかった。
「ちょっと、美帆!」
流石に、自分の友人の振る舞いに焦ったわたしは身を乗り出した。
けれど、よくよく見てみれば、美帆はスースーと小さな寝息を立てている。長い睫毛は伏せられたままピクリとも動かない。
「……寝ちゃった」
芹生は美帆をゆっくりと起こしながら、ぽつりと呟いた。どうやら、美帆の限界をとっくに突破していたらしかった。きっと、緊張が重なったこともあって、無理に呑んだんだろう。
こういうところがあるから、彼女を憎めないし、どこか可愛いと思ってしまう。
お会計だけ済ませて、美帆は一人暮らしのため、酔いが醒めるまでうちで寝かすことした。
芹生が、よっこらせと美帆を背負う。
外に出れば、澄んだ紺色が夜空を覆い、きらきらと星が瞬いていた。
じわりとした熱い空気が、夏の夜を満たしている。
足音だけで、会話はない。見当たらない。
何を話せば良いのだろう、なんて、芹生相手に考えるのは初めてだった。
7年の月日は、あっというまなようで、ヒトとヒトとの間に距離をつくるのには充分な時間なのだ。
あの頃とおなじ、少し前を歩く芹生の背中を見ながら、わたしはそんなことを思っていた。